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計算ガイド

寄与分の計算方法【療養看護型を中心に詳しく解説】

相続における寄与分の計算方法を、家庭裁判所の実務基準に基づいて詳しく解説します。特に多い「療養看護型」(介護による寄与分)の計算式を、具体的な数字を使ってステップごとに説明します。

寄与分とは

寄与分(民法904条の2)とは、相続人が被相続人(亡くなった方)の財産の維持または増加に特別の寄与をした場合に、法定相続分に上乗せして取得できる制度です。

重要な前提

寄与分を主張できるのは相続人のみです。相続人以外の親族(長男の嫁など)は「特別寄与料」(民法1050条)を請求します。どちらに該当するかで手続きが異なります。

寄与分の5つの類型

1. 家事従事型

被相続人の事業(農業・商業等)に無報酬またはそれに近い条件で従事した場合。計算式:従事した期間の給与相当額。

2. 金銭等出資型

被相続人に対して財産上の給付をした場合(不動産購入資金の援助など)。計算式:出資した金額×貨幣価値の変動を考慮。

3. 療養看護型(本ページの主題)

被相続人の療養看護を行った場合。計算式:介護報酬基準額×裁量的割合×介護日数。

4. 扶養型

被相続人の生活費を負担した場合。計算式:負担した扶養料の総額。

5. 財産管理型

被相続人の財産(不動産など)を管理した場合。計算式:管理費用の節約額または報酬相当額。

療養看護型の計算式(介護による寄与分)

介護による寄与分の算定は、家庭裁判所の実務で以下の計算式が一般的に用いられています。

基本計算式

寄与分 = 介護報酬相当額 x 裁量的割合

介護報酬相当額 = 日額単価 x 介護日数

Step 1:介護報酬相当額を算出する

まず、行った介護の種類に応じた報酬単価を確認します。

介護の種類単価内容
身体介護4,000円/時間入浴・排泄・食事介助
生活援助2,500円/時間掃除・洗濯・買物・調理
通院付添3,500円/回病院への付き添い・送迎

例えば、ほぼ毎日身体介護を3時間行った場合、1日あたり 4,000円 x 3時間 = 12,000円となります。これに月間稼働日数(26日)と月数を掛けて介護報酬相当額を算出します。

Step 2:裁量的割合を適用する

家族が行う介護はプロの介護士と同等ではないため、裁量的割合(減額率)を適用します。要介護度に応じて以下の割合が用いられています。

要介護度裁量的割合
認定なし30%
要支援135%
要支援240%
要介護145%
要介護250%
要介護360%
要介護470%
要介護580%

Step 3:遺産分割への反映

寄与分が認められると、以下のように遺産分割に反映されます。

1. 遺産総額から寄与分を差し引く → みなし相続財産

2. みなし相続財産を法定相続分で分割

3. 寄与者の取り分 = 法定相続分 + 寄与分

具体的な計算例

例1:長男が親を5年間毎日介護(要介護3)

被相続人:父(遺産総額5,000万円)

相続人:長男・次男・三男の3名

長男が父を5年間ほぼ毎日、身体介護+生活援助を実施

介護報酬相当額(身体介護)1,872万円
介護報酬相当額(生活援助)780万円
合計介護報酬相当額2,652万円
裁量的割合60%
寄与分1,591万円

遺産分割のイメージ

みなし相続財産 = 5,000万円 - 1,591万円

各相続人の法定相続分 = みなし相続財産 / 3

長男の取得額 = 法定相続分 + 1,591万円

例2:長女が親を4年間週4日介護(要介護2)

被相続人:母(遺産総額3,000万円)

相続人:長女・次女の2名

長女が母を4年間、週4日程度、身体介護+生活援助+通院付添を実施

介護報酬相当額(身体介護)614万円
介護報酬相当額(生活援助)288万円
介護報酬相当額(通院付添)33万円
合計介護報酬相当額936万円
裁量的割合50%
寄与分468万円

寄与分と特別寄与料の違い

比較項目寄与分特別寄与料
根拠条文民法904条の2民法1050条
請求者相続人相続人以外の親族
具体例長男(子)が親を介護長男の嫁が義父母を介護
手続き遺産分割の中で主張遺産分割とは別の調停
請求先他の共同相続人相続人全員
計算方法介護報酬×裁量的割合介護報酬×裁量的割合(同様)
上限遺産総額(実務上)遺産総額(法定)
請求期限遺産分割前まで知った時から6ヶ月/1年
創設年1980年(昭和55年)2019年(令和元年)

計算方法自体は類似していますが、誰が請求できるか手続きが大きく異なります。自分がどちらに該当するかを確認した上で、適切な制度を利用しましょう。

寄与分が認められるためのポイント

1. 「特別の」寄与であること

親子間には扶養義務があるため、通常の扶養の範囲を超える「特別の」寄与が必要です。時々様子を見に行く程度では不十分で、日常的・継続的な介護を相当期間行っていたことが求められます。

2. 無償またはそれに近い条件であること

被相続人から相当な対価を受け取っていた場合は認められません。ただし、同居に伴う住居費の免除や食費の負担程度は問題ないとされています。

3. 財産の維持・増加との因果関係

介護によって施設入所費用が節約された(=財産が維持された)という関係が必要です。介護がなければどの程度の費用がかかっていたかを示すことが有効です。

4. 十分な証拠の準備

介護日誌、要介護認定通知書、ケアマネジャーの記録、通院の領収書、写真やメールのやり取りなど、客観的な証拠を準備しましょう。証拠の有無が認定額に大きく影響します。

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寄与分の計算に関するよくある質問

寄与分は自動的に認められるものですか?
いいえ、寄与分は自動的には認められません。遺産分割協議の中で他の相続人の同意を得るか、家庭裁判所の調停・審判で認めてもらう必要があります。主張する側が寄与の内容・程度を立証する責任を負います。
寄与分と法定相続分の関係は?
寄与分が認められると、まず遺産総額から寄与分を差し引いた額を「みなし相続財産」として法定相続分で分割し、寄与者はその取り分に寄与分を加算した額を取得します。つまり、寄与分は法定相続分に上乗せされるイメージです。
介護以外でも寄与分は認められますか?
はい、寄与分には5つの類型があります。(1)家事従事型(家業への従事)、(2)金銭等出資型(財産の提供)、(3)療養看護型(介護・看護)、(4)扶養型(生活費の負担)、(5)財産管理型(不動産管理等)です。本ページでは療養看護型を中心に解説しています。
寄与分に上限はありますか?
法律上の明確な上限規定はありませんが、実務上は遺産総額の範囲内で決定されます。また、あまりに高額な寄与分の主張は認められにくく、他の相続人の遺留分を侵害することはできないとする裁判例もあります。
配偶者の寄与を相続人が主張できますか?
以前は「履行補助者」の理論により、配偶者の介護を相続人の寄与分として主張することがありましたが、2019年の特別寄与料制度の創設により、配偶者は独自に特別寄与料を請求できるようになりました。現在は別々の制度として請求するのが原則です。

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